『家づくり ゼミナール』 開講!
現在、住宅のつくり方、つまり工法が数え切れないほど氾濫しています。
「木造在来工法」と一言にいっても在来工法というイメージだけでその内容は一体何でしょうか?
専門家でも理解しにくいのが現状です。
工法の違いで「住宅の方向性」がまったく変わってきます。
構造や材質について、ちょっと勉強するだけで「住宅の方向性」の違いを理解できると思います。
同じように見える住宅の工事現場で、工法の違いを確認できるチェックポイント、様々な疑問点を勉強していきましょう。
1.住まいの本質とは
家をつくるときに何を基準にしますか?
狭くて雑然とした部屋からの脱出だけでいいのでしょうか。
建築家や設計士はデザインに重点を置きます。
余裕のある人は豪華さや重厚さに心が動かされ、我々一般人は、狭くて小さな家からの脱出が脳裏から離れず、大きな家への憧れに惑わされています。
ここでもう一度、住まいの本質を考えて見ましょう。
自然界の一部に過ぎない人間という生態が、健康と快適と安全を維持しながら、環境への負荷を最小限にとどめ、本当の意味での環境共生型の住処を構築しなければならない時期にあるのではと思います。
我々が手にした、科学技術と化学物質による経済の発展は、生活の向上に貢献し、誰もがその恩恵を受けられるまでに至っています。
この様な経緯のもと、化石燃料や資源の大量消費から得られる利便性や、過度とも言えるエアコン環境で、人々の欲求は満たされ、無条件に受け入れられているのが現状です。
これらの技術や経済の発展から、人類史上初めて経験する異常気象問題へとつながっていきます。
人間の活動による環境破壊は、我々自身の生存の危機へ直面していることが認識され、経済より環境への優先が「パリ協定」によって、採択されるようになりました。
2.住宅の耐久年数と住まいの価値について
「資材は、耐久性の長い自然素材を選ぶ」
「耐久性の短い部材は、簡単に交換できる工夫をする」
たったこれだけの基本理念で、日本の住宅平均寿命は100年以上になります。
現在の住宅の短い耐久年数、こんなにも簡単なことの改善で、長持ちするのです。
今までなぜ、気がつかなかったのでしょう。
現在の住宅は、25年前後に大きな修理が発生するような構造や材料でつくられています。
なぜって、比較的安価でもぱっと見が良く、施工も手間がかかりずらくて早いから。
けれど、無垢の木ではない床材は、20数年でブカブカになるため、張り替えを余儀なくされます。すぐに数十万〜数百万円かかります。
傷みやすい構造と材料でつくられた台所・風呂・洗面脱衣・トイレ等の水回りは、数百万円〜一千万円前後の修理費が必要となる可能性も。
住宅ローンが終わったと同時に家を建て替えるのは、老後の生活の金銭的負担はもとより、環境にも大きな負荷を与えます。
修理費が最小限で済む住宅ができたら、わざわざ家を建て替える必要がなくなります。
3.省エネ対策と住まいの価値について
人間は、快適性を求めるあまり、不自然なほどの人工的な環境をつくりあげてしまいました。
エネルギー消費の拡大は、人工的環境を維持するために拡がり続けました。
エネルギー消費とは、生命が数十億年かけて蓄積固定化した炭素と、空気中の酸素を消費し、
二酸化炭素と、その他の化学物質を空気中に廃棄し続けている状況です。
この炭素と酸素の消費を極力抑えなければ、地球温暖化はますます進み、生態への異常な負荷が加速され続けます。
省エネ問題は、我々の遺伝子を引き継ぐ子供たちのために、未来を見据えた取り組みをしていかなければなりません。
「夏は我慢できる暑さ」「冬は最低限の暖かさ」には、省エネ対策の見方の変化と、環境に対する深い意味があります。
自然環境型の住まいを目指すと超省エネ対策になるのです。
4.精神安定効果や健康と住まいの価値について
山に行って森林浴をすると、なぜ気持ちが良くなるのでしょう。
景色がいいから、それとも、フィトンチッド効果(樹木が虫に食べられないように出す成分)があるからでしょうか。
「気持ちがいいと感じる」のは精神安定効果があるためです。
精神安定効果は脳細胞の活性化にあり、脳細胞の活性化は森林の空気の質に関係があるようです。
森林の空気はマイナスの電荷を帯びているところにポイントがあるそう。
呼吸作用によって体内に取り込まれた空気は、血流によって人体37兆個2000億個の細胞全てに酸素を補給してくれます。
この酸素が細胞膜を通過できると細胞は活性化できるそうです。
細胞膜で酸素がはじかれてしまうと、細胞への酸素補給ができなくなり、酸欠状態となり不活性状態を起こすようです。
そう考えると...換気扇で空気を入れ替えた程度では、本当の意味での健康住宅にはならないのではないかと思ってしまいますね。
5.人工的環境の住まいの価値について
数百年来続いてきた伝統工法の家は、畳の床であったため、冬の厳しい寒さを極所暖房で過せました。
その後、日本の住宅は様変わりし、畳からフローリングの床板へ、洋風化へと大きく変化しました。
畳が消え、冬になるとフローリングの床が氷の世界になり、暖房方法も変わらなければならない状況になりました。
高度経済成長とともに暖房システムも変化しましたが、オイルショックを契機に省エネ問題が浮上しました。
そして、人間の知識と技術が、断熱性能や気密性能を重視し、人工的環境の家づくりが優先され、現在に至ったのです。
この高性能の人工的環境の家づくりは、生態が初めて体験する化学物質の空気汚染へと発展し「見えない脅威」となっています。
6.自然環境型の住まいの価値について
自然環境型の住まいは、住めば住むほど、素材の個性と自然の美しさが際立ってきます。
家づくりの基本は、耐久性が長い自然素材を使い、自然環境型を目指すことです。
そこを目指すと、修理費が最小限で済ませられ、100年以上住み続けることができるのです。
自然素材は、空気中の湿度とのバランスを平衡含水率の形で保つため、調湿作用を繰り返します。
このような環境のもと、室内空気環境は森林とほぼ同じ空気質を維持できるようになります。
人間と言う自然界の一生態が生きていくためには、森林の空気が欠かせません。
自然素材がつくりだす空気の質の違いと、最低限の修理費で100年以上住める家を基本とすることで、家づくりをもう一度原点から考え直してゆく。
それが、テクノロジーを極め、不自然になってしまった私たち人類の還る自然な場所なのではないでしょうか。